「ありがとう」
たった5文字、されど5文字。
あなたが心からの感謝を込めて、最後に言ったのはいつでしょうか?
身近な人に改まって感謝の言葉を伝えるというのは、案外恥ずかしいものです。
別に感謝を伝えなくても当たり前にいてくれる人に、心からの感謝を伝えるというのは勇気がいることです。
でもね。
もしあなたが今、どん底にいるのなら。
なかなか前を向いて歩けない、そんな日々が続いているのなら…..。
「ありがとう」の5文字は、『勇気の愛言葉』になり得るはずです。
僕が心からそう感じたエピソードを、今から語らせてもらいますね。
***
あれは24歳の頃(というか今も24歳)
東京から福岡に引っ越したときの話です。
22歳の時、新卒入社とともに上京。
愛知県の田舎に住んでいた僕にとって、夢にまで見た東京暮らしです。
ドラマや映画って、だいたい東京が舞台ですからね。
そりゃまぁ憧れますよ(笑)
しかし、そんな憧れの東京暮らしを2年でグッバイ。
嘘でも誇張でもなく「思い立ったが吉日」という言葉を実践するかの如く、福岡の北九州に引っ越しました。
福岡に引っ越した理由は本当に何もないのですが、「東京を離れよう」と思った理由はあります。
その理由を一言で言うと、「人生に行き詰まりを感じていたから」です。
「まだ24の若造が! 人生を語るな!」
人生の諸先輩方の意見はごもっとも。
百戦錬磨、酸いも甘いも経験している大先輩からすると、可愛い戯言に聞こえるでしょう。
でも、僕はたしかに感じていました。
毎日必死に走っているんだけど、一向に景色が変わらない。
一人孤独に誰もいない真っ暗な部屋で、強度MAXのランニングマシンを走り続けている感覚でした。
思えば当時の僕は、「周りの期待に応えなきゃ!」と必死になっていたようにも思えます。
いや……..もっと正直に答えると、「周りの期待に応えないと、みんな離れて行ってしまう」と思っていました。
具体的に言うと、当時はネットビジネスと格闘技に力を入れていたものですから、
「ネットビジネスをがんばらないと、今ある関係はなくなってしまう……」
「格闘技をがんばらないと、誰からも相手にされなくなる…..」
なんてことをずっと悩んでいました。
今思うとほんとバカげた考えだなと思うのですが、当時の僕は心から本気でそう思っていました。
あ、ネットビジネスと格闘技うんぬんの詳しい話は、下記記事で話しております。
ここで語ると超長くなるので、割愛させていただきます。
(読まなくても本記事の内容はご理解いただけます)
ネットビジネスのこと→『主人公ハウ』の記事
格闘技のこと→『旅人アマク』の記事
さてと、話を戻して・・・
あなたも似たような経験はございませんか?
「試合で活躍しないと、周りから認めてもらえない…..」
「テストで良い成績を取らないと、親に振り向いてもらえない…..」
「売り上げを上げないと、誰もわたしを相手にしてくれない……」
特に学生時代を思い返すと、心当たりがあるかもしれません。
クラスや家族が自分の環境の大半を占める子ども時代は、どうしても承認欲求を求めがちです。
そんな青い時期が、大人になっても続いていると思ってください(笑)
「周りの期待に応えないと…..!」
一見すると、良いことのようにも思えるこの言葉。
周囲の期待を満たしているんだから、立派なことのようにも思えますよね。
でも実は、とてつもない魔力をはらんでいます。
周囲の期待を満たし続けた先にあるもの。
それは疲弊してボロボロになった自分。
にもかかわらず、どこにも辿り着いていない自分です。
特に「格闘技をやっている自分」は、自分に嘘をつき、周りの期待を満たすために必死だったように思います。
「ジムの人が期待してくれるから、試合のためにがんばらなきゃいけない」
「バイト先の同僚やお客様も応援してくれるから、がんばらなきゃいけない」
「『プロになる!』と一度口走ってしまったものだから、もう引き返せない」
「格闘技をがんばり続けないと、みんな離れて行ってしまう」
「自分がこうでなければ、こうなる」という固定観念にがんじがらめになり、それはそれは息苦しかったです。
僕はこの心を裏返したときに、ある1つの答えに辿り着きました。
それは「結局のところ、周りは皆、敵である」という、それは恐ろしい答えです。
「敵」というと語弊があるかもしれませんが、「結局、自分の味方になってくれない」という意味でとらえてください。
こう考えるのも無理はなりません。
だって「周りの期待に応えないと、みんな離れていく」と思っているのですから。
期待に応えている間は味方だけど、そうじゃなければ敵。
家族にそんなこと思います?
たぶん大手上場企業を辞めてニートになっても、優しく見放さずにいてくれますよ。(怒られるかもしれないけどね)
そんなことを当時の僕は思っていました。
もちろん、悪いのは僕です。
夢だけ語って叶えられない、意欲を保てない僕の責任です。
でも、がんばればがんばるほど息が吸えなくなり、やる気がなくなっていく。
他でもない自分に嘘をつき続けている状態が、心底嫌になる。
来る日も来る日も仮面をかぶり続ける自分。
一寸先どころか、100万キロメートル先も闇しか見えません。
擦り減って擦り減って擦り減って…….。
「あ、もう無理だ」と、糸がプツンと切れました。
いや、切れかかりました。
幸か不幸か。
切れかかったタイミングで、ちょうど父親が手術をすることになり、愛知の地元に帰ることになったのです。
実家は「農家」
祖父が早くに天国へ行き、男手は父親一人です。
その父が手術をすると男手がいなくなるので、満を持して僕が招集されたわけですよ。
渡りに船というかなんというか。
父には悪いですが「手術をしてくれてありがとう」と言いたくなるレベルで、GOODタイミングでした。
久しぶりに母の手料理を食べ、海や自然の香りが充満する地元の後光を浴びる。
心身ともに回復してくのがよくわかりました。
何を期待するわけでもなく、ただただ僕を愛してくれる家族。
そんな温もり溢れる場所では、自然と「ありがとう」の5文字が浮かぶものです。
家族だけじゃない。
畑でよく会うおばあちゃんも。
昔よくキャッチボールをした隣のおじちゃんも。
大きな犬を連れながら海で散歩しているおじいちゃんも。
みんな「よく帰ってきたね。元気そうでよかった」と、温かい言葉をかけてくれます。
そんな地元で3週間を過ごす中。
僕の心に絡まっていたナニカが、1つずつ解けていくような感じがしました。
***
簡単なことだったのです。
立場を逆にすれば、すぐにわかったことなのです。
たとえば、あなたの友だちに「歌手」を目指している人がいたとして。
その子が「もう疲れたからやめたい…..」と、相談してきたらどうでしょう。
「期待してたのに! この意気地なし….!」と罵るでしょうか?
心が綺麗な人であれば、まず思わないでしょう。
むしろ「ナイスチャレンジ! 今はゆっくり休んで」と、その努力を讃えると思います。
そしてその友だちもこう言うことでしょう。
「ありがとう。次のチャレンジも見てて!」と。
このやり取りのどこに、「敵」を感じましょうか。
感謝を伝えること。
「ありがとう」を伝えること。
それは『あなたを奮い立たせる、勇気の愛言葉』になり得ます。
あなたに敵はいません。
いるとしたら、それはあなたがそう思っているだけのこと。
もしあなたが「周囲の期待」にがんじがらめになっているのなら…..。
期待を裏切った周囲が「敵」になる未来を、危惧しているのなら…..。
もしかすると、『感謝』が不足しているのかもしれません。
建前ではない、形式上で淡白なものでもない。
心からの『ありがとう』を伝えられていないのかもしれません。
世間体のためでもない。相手のためでもない。
他ならぬ「あなた自身」のために。
あなた自身が「わたしの周りはみんな味方なんだ」と気づくために。
どうか、心からの感謝を伝えてみてください。
友だちでも恋人でも、職場の同僚でも飲み仲間でも。
もちろん、家族でも構いません。
あなたの大切な人に、心のこもった感謝を伝えてみませんか?
***
2024年7月。
僕は東京から福岡の北九州に引っ越しました。
「やけん」「やっとーと」「なんとかっちゃ」
東京では耳にしなかった、新鮮な方言が耳に飛び込んできます。
実家から東京に戻った後(正確には戻る前に電話で)、すぐに職場の責任者に退職することを伝え、アパートの大家さんにも退居することを伝えました。
「今ある環境を手放すことでしか、絡まっている糸を完全に解くことはできない」と思ったからです。
6月末。
最後の出勤日を終えた僕は、夜な夜な手紙を書き始めました。
もちろん、その宛て先は「バイト先の同僚(と、特に仲が良かったお客様)」です。
合計50枚は書いたでしょうか。
22時から書き始め、気づいたら朝に。
一睡もせず、ただひたすらに感謝の言葉を綴っていました。
久しぶりにボールペンを使ったものですから、右手が攣りそうになりましたよ。
でも、すごく気持ちが良かった。
普段なら恥ずかしくて言えないけど。
手紙だからこそ伝えられる感謝を伝えられた。
あんなことやこんなこと。
笑い話も織り交ぜながら、ありったけの「ありがとう」を込めて。
気づくと、「みんな敵である」なんて愚かな考えは、きれいさっぱり消えていました。
それどころか「みんな味方である」と、今、自分が生きられている状況への感謝で溢れていました。
もう怖くない。
これから何が起きても「勇気の愛言葉」さえ忘れなければ、何度でもやり直せる。
だって、僕にはたくさんの「味方」がいるのだから。
***
そんないきさつを経て制作したのが、本書『恩人グラ』になります。
他の絵本と差別するわけではありませんが、本書はとりわけ長い時間をかけて制作しました。
期間にして3カ月。
「感謝」というシンプルなテーマながらも「200ページ越え」と。
もはや絵本なのか漫画なのかわからないレベルの、超大作になりました(笑)
僕は今でも、ことあるごとに本書を読み返しています。
たった5文字、されど5文字。
心からの「ありがとう」を伝える勇気を忘れずに、これからも邁進していきます。
本書があなたにとって、先の見えない真っ暗な現状から奮い立つ一助に。
大切な人に『心からの感謝』を伝えるキッカケになれば、とてもうれしいです。
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書籍はこちらからご覧いただけます。
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電子書籍版:498円(税込み)
ペーパーバック版:2540円(税込み)
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絵本一覧は、こちらの記事でご紹介しています。
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また、本記事で出てきた「実家」のお話も、下記記事で詳しく綴っています。
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